賃貸物件の利回り計算方法|プロが教える実践ガイド
「この物件、利回り8%って書いてあるけど、本当にそんなに儲かるの?」
2025年に入ってから、このような質問を静岡市内のオーナー様から月に3〜4件いただいています。結論から言うと、物件広告に記載されている利回りだけを見て判断するのは非常に危険です。
日本不動産研究所が2025年4月に公表した「第52回不動産投資家調査」によると、東京城南エリアのワンルームタイプの期待利回りは3.7%まで低下しています(参考:日本不動産研究所「第52回不動産投資家調査」2025年4月 https://www.reinet.or.jp/?p=35915 )。この数字と広告の「利回り8%」の間にはなぜこれほど大きな差があるのか。その答えは、利回りの「種類」と「計算方法」にあります。
この記事では、賃貸物件の利回り計算について、10年以上不動産業界で働いてきた私の実務経験を交えながら、初心者の方にも分かりやすく解説します。
目次
賃貸物件の利回りとは?基本的な考え方
3種類の利回りと計算方法
利回りの相場と地域差
利回り計算でやってはいけないNG行動
今すぐできる利回り計算の実践ステップ
賃貸物件の利回りとは?基本的な考え方
そもそも利回りとは何か
利回りとは、投資した金額に対して1年間でどれだけの収益を得られるかを示す指標です。賃貸物件においては、物件の購入価格に対する年間家賃収入の割合を意味します。
計算式は非常にシンプルで、「年間家賃収入÷物件購入価格×100」で算出できます。
たとえば、2,000万円の物件で年間100万円の家賃収入がある場合、利回りは5%となります。この数字を見れば、単純計算で20年で投資金額を回収できることが分かります。
なぜ利回り計算が重要なのか
私が2025年2月に担当した静岡市葵区のオーナー様は、物件広告の「利回り10%」という数字を見て中古アパートの購入を検討されていました。しかし、実際に諸経費を含めて計算し直したところ、実質利回りは4.8%しかありませんでした。
広告の数字と実態にこれほど差があると、想定していた収益計画が大きく狂ってしまいます。購入前に正確な利回りを把握することは、失敗を防ぐ第一歩なのです。
3種類の利回りと計算方法
表面利回り(グロス利回り)の計算
表面利回りは、最もシンプルな利回りの計算方法です。
【計算式】 表面利回り(%)= 年間家賃収入 ÷ 物件購入価格 × 100
【計算例】 物件価格3,000万円、月額家賃8万円×6戸の場合 年間家賃収入:8万円×6戸×12ヶ月=576万円 表面利回り:576万円÷3,000万円×100=19.2%
一見すると非常に魅力的な数字に見えますが、ここには管理費・修繕費・税金などの経費が一切含まれていません。私の経験では、表面利回りと実質利回りの差は2〜4%程度あることがほとんどです。
2025年6月に私が査定した静岡市駿河区の築30年アパートは、表面利回り9.2%と表示されていましたが、実質利回りを計算すると5.1%まで下がりました。
実質利回り(ネット利回り)の計算
実質利回りは、実際の収益性を把握するために最も重要な指標です。
【計算式】 実質利回り(%)=(年間家賃収入 − 年間経費)÷(物件価格 + 購入時諸費用)× 100
【年間経費の内訳】 固定資産税・都市計画税、管理委託費(家賃の5〜8%程度)、修繕積立金、火災保険料、共用部の水道光熱費、入退去に伴う原状回復費用など。
【購入時諸費用の内訳】 不動産取得税、登記費用、仲介手数料、ローン事務手数料など。一般的に物件価格の7〜10%程度が目安とされています。
【計算例】 物件価格3,000万円、年間家賃収入576万円、年間経費100万円、購入時諸費用250万円の場合 実質利回り:(576万円−100万円)÷(3,000万円+250万円)×100=14.6%
私が2025年1月に担当した静岡市清水区の収益物件では、表面利回り7.5%に対して実質利回りは4.2%でした。この差額の3.3%分が「見えないコスト」として毎年発生しているわけです。
想定利回りに注意
物件広告でよく見かける「想定利回り」は、満室を前提として計算された数字です。現在空室がある物件でも、「満室になったら」という仮定で高い利回りが表示されていることがあります。
2025年3月に相談を受けたケースでは、6室中2室が空室の物件が「想定利回り9%」で販売されていました。しかし、現状の入居状況で計算すると表面利回りは6%でした。
想定利回りはあくまで「理想値」です。特に地方の築古物件では満室を維持すること自体が難しいため、想定利回りを鵜呑みにしないよう注意してください。
利回りの相場と地域差
2025年の期待利回り相場
日本不動産研究所の「第52回不動産投資家調査」(2025年4月現在)によると、賃貸住宅の期待利回りは以下のような水準となっています(参考:日本不動産研究所「第52回不動産投資家調査」2025年4月 https://www.reinet.or.jp/?page_id=172 )。
東京・城南エリア(ワンルーム):3.7% 東京・城南エリア(ファミリー):3.8% 大阪:4.5〜5.0%程度 名古屋:4.5〜5.0%程度 福岡:4.5〜5.0%程度 地方都市:5.0〜6.0%程度
注目すべきは、東京のワンルームタイプの期待利回りが4期ぶりに低下し、ファミリータイプを下回ったことです。投資家の関心が単身者向け賃貸住宅に集中していることが背景にあります。
静岡市の利回り実態
私が実務で見ている静岡市の中古アパート・マンションの表面利回りは、おおむね以下の水準です(2025年11月時点の私の取り扱い物件から)。
築10年以内:5〜7% 築10〜20年:7〜9% 築20年以上:9〜12%
ただし、これは表面利回りです。実質利回りで見ると、それぞれ1.5〜3%程度低くなると考えてください。
2025年8月に私が仲介した静岡市葵区の築18年・8室アパートは、表面利回り8.2%、実質利回り5.5%でした。この物件は駅から徒歩12分と少し離れていましたが、2025年の金利上昇局面でも安定した需要があるエリアだったため、売主・買主双方にとって納得のいく取引となりました。
利回り計算でやってはいけないNG行動
NG1:表面利回りだけで判断する
これは最もよくある失敗パターンです。
2024年12月に相談を受けたケースでは、表面利回り12%の物件を購入したお客様が、初年度から月々3万円以上の持ち出しが発生していました。原因を調べると、固定資産税と修繕費の見積もりが甘く、実質利回りは2%台でした。
高利回り物件には、必ず「高利回りになっている理由」があります。立地が悪い、築年数が古い、設備が劣化しているなど、何らかの問題を抱えていることが多いです。
NG2:空室率を考慮しない
LIFULL HOME'Sの調査によると、2024年1月現在の賃貸用住宅の空室率は東京都で14.5%です(参考:LIFULL HOME'S「全国の賃貸用住宅の空室率一覧」 https://www.homes.co.jp/ )。
静岡市でも、エリアによっては空室率が20%を超える地域があります。私が担当している物件でも、駅から離れた築古物件は平均して年間1〜2ヶ月の空室期間が発生しています。
利回り計算をする際は、空室率を10〜15%程度見込んでおくことをお勧めします。
NG3:修繕費を軽視する
築年数が経過した物件ほど修繕費がかかります。特に築20年を超えると、給湯器・エアコン・水回りなどの交換時期が重なり、一度に数十万円〜数百万円の支出が発生することがあります。
私が2025年4月に担当したケースでは、築25年のアパートオーナー様が1年間で280万円の修繕費を支払われていました。入退去時の原状回復費用も含めると、表面利回り9%の物件が実質利回り3%になっていた計算です。
NG4:金利上昇リスクを無視する
2025年現在、日本銀行は政策金利を0.75%まで引き上げています。日本不動産研究所の調査でも、不動産投資家の約33%が「市場はやや萎縮し、停滞の方向に移行しつつある」と回答しています(参考:日本不動産研究所「第52回不動産投資家調査」2025年4月)。
ローンを組んで物件を購入する場合、金利が0.5%上がるだけで月々の返済額は数万円単位で増加します。利回り計算をする際は、金利上昇時のシミュレーションも必ず行ってください。
今すぐできる利回り計算の実践ステップ
ステップ1:必要な情報を集める
利回り計算に必要な情報は以下の通りです。
物件価格(税込)、年間家賃収入(現状の入居状況で計算)、固定資産税・都市計画税(年額)、管理費・修繕積立金(年額)、管理委託費(家賃の5〜8%程度)、火災保険料(年額)、購入時の諸費用(物件価格の7〜10%で概算)。
これらの情報は、不動産会社に問い合わせれば教えてもらえます。私が対応する際は、これらの数字を一覧にした資料をお渡ししています。
ステップ2:表面利回りと実質利回りを両方計算する
まず表面利回りで物件を絞り込み、その後実質利回りで精査するという2段階のアプローチをお勧めします。
目安として、静岡市の中古アパートであれば、表面利回り7%以上、実質利回り4%以上が一つの基準になると私は考えています。ただし、これはあくまで目安であり、立地・築年数・将来の修繕計画などを総合的に判断する必要があります。
ステップ3:空室率と修繕費を加味したシミュレーションを行う
最後に、空室率10〜15%、年間修繕費(家賃収入の5〜10%程度)を見込んだシミュレーションを行います。
私が2025年10月に作成したある物件のシミュレーションでは、以下のような結果になりました。
物件価格:2,500万円、購入時諸費用:200万円、年間家賃収入:240万円(満室時)、空室率10%考慮後:216万円、年間経費(税金・管理費・修繕費等):60万円、実質年間収益:156万円、実質利回り:5.8%
この数字を見て、投資するかどうかを判断します。
まとめ
賃貸物件の利回り計算で押さえるべきポイントは3つです。
1つ目は、表面利回りと実質利回りの違いを理解すること。広告の数字を鵜呑みにせず、必ず実質利回りで判断してください。
2つ目は、空室率と修繕費を必ず見込むこと。「満室前提」「修繕費ゼロ」のシミュレーションは現実的ではありません。
3つ目は、金利上昇リスクを考慮すること。2025年は金融政策の転換期にあり、今後さらに金利が上がる可能性があります。
利回り計算は、賃貸経営の成否を左右する最も基本的かつ重要なスキルです。面倒に感じるかもしれませんが、一度身につければ一生使える知識です。
静岡市で収益物件の購入・売却をお考えの方、利回り計算でお困りの方は、お気軽にご相談ください。物件ごとに詳細なシミュレーションを作成し、実務経験に基づいたアドバイスをさせていただきます。
参考文献
日本不動産研究所「第52回不動産投資家調査」2025年4月 https://www.reinet.or.jp/?p=35915
日本不動産研究所「不動産投資家調査」 https://www.reinet.or.jp/?page_id=172
CBRE「不動産投資に関するアンケート-期待利回り-」2025年3月 https://www.cbre.co.jp/insights/reports/不動産投資に関するアンケート-期待利回り-2025年3月
全日本不動産協会「2025年の不動産市況の見通し」2025年4月 https://magazine.zennichi.or.jp/commentary/20377
著者情報

佐須陽介
代表・宅地建物取引士
宅地建物取引士(静岡) 第 025298号 賃貸不動産経営管理士(2)第 059325号 住宅ローンアドバイザー
業界歴15年
静岡市出身、現在は静岡市を拠点に不動産仲介・コンサルティング業務を手掛けています。これまで新築・中古マンション、戸建、賃貸管理まで幅広く携わってきました。
数多くのお客様の住まい選びをサポート。住宅ローンの借り換え支援なども含め、現実的な選択肢を提示することに定評があります。
静岡市を拠点に不動産仲介・コンサルティング業務を手掛けています。私自身もかつて住宅ローンの借り換えを経験し、「数字に強く、現実的な選択肢を示すこと」を常に心がけています。代表メッセージ(Authentill Style)にあるように、お客様に寄り添い、安心できる住まい選びを一緒に進めたいと心から願っています。
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