不動産売買とは?宅建士が解説する物件取引の流れと失敗しないコツ

目次

  1. 不動産売買とは?基本的な定義と仕組み

  2. 不動産売買の流れ|7つのステップで理解する

  3. 物件選びで失敗しないための5つのポイント

  4. 最新の法改正|売買取引で知っておくべき変更点

  5. 静岡市での不動産売買|地域特性と実例紹介

  6. よくある誤解と注意点

  7. よくある質問(FAQ)


不動産売買とは?基本的な定義と仕組み

不動産売買の法的な定義

不動産売買とは、土地や建物といった不動産の所有権を、売主から買主へ移転させる取引のことを指します。

私が宅建士としてお客様に説明する際、「不動産売買は、法律で厳しく保護された特別な取引です」とお伝えしています。なぜなら、一般的な商品の売買と異なり、宅地建物取引業法や民法によって、消費者保護のための様々なルールが設けられているからです。

具体的には、宅地建物取引業法第35条において、不動産業者は売買契約の前に「重要事項説明」を行う義務があります。これは買主が十分な情報を得た上で購入判断ができるよう、法律で定められた制度です。

(参考:国土交通省「宅地建物取引業法の解釈・運用の考え方」2025年4月1日以降版 https://www.mlit.go.jp/totikensangyo/const/1_6_bt_000268.html

「物件」とは何を指すのか

不動産売買における「物件」とは、取引の対象となる不動産そのものを指します。具体的には以下のようなものが含まれます。

  • 土地:住宅用地、商業用地、農地など

  • 建物:戸建住宅、マンション、アパート、事務所ビルなど

  • 土地付き建物:土地と建物をセットで取引するケース

私の経験では、初めて不動産取引をされるお客様から「物件を見に行く」という表現をよく耳にします。この場合の「物件」は、購入候補となる不動産全般を指していることがほとんどです。


不動産売買の流れ|7つのステップで理解する

不動産売買は、一般的に以下の7つのステップで進みます。売却期間の目安は5〜6ヶ月程度ですが、物件の条件や市場状況によって変動します。

ステップ1:相場を調べる

まず最初に行うべきは、ご自身の不動産がいくらで売れそうか、または購入したい地域の相場がいくらかを把握することです。

相場を調べる方法として、国土交通省の「不動産情報ライブラリ」や「レインズ・マーケット・インフォメーション」が活用できます。私が実務で感じるのは、事前に相場を把握しているお客様ほど、適正な価格での取引が実現しやすいということです。

(参考:国土交通省「不動産情報ライブラリ」https://www.reinfolib.mlit.go.jp/

ステップ2:不動産会社への査定依頼

次に、不動産会社に査定を依頼します。査定には「机上査定」と「訪問査定」の2種類があり、正確な価格を知るためには訪問査定をおすすめしています。

私が担当させていただく際には、近隣の成約事例や現在の市場動向を踏まえ、売れやすい価格帯をご提案するようにしています。

ステップ3:媒介契約の締結

売却を正式に依頼する場合、不動産会社と媒介契約を結びます。媒介契約には「一般媒介契約」「専任媒介契約」「専属専任媒介契約」の3種類があります。

2025年1月の法改正により、専任媒介契約・専属専任媒介契約を締結した場合、不動産会社はレインズ(不動産流通標準情報システム)への登録だけでなく、取引状況の登録も義務付けられました。これにより、いわゆる「囲い込み」が抑制され、売主にとってより透明性の高い取引が期待できるようになっています。

(参考:国土交通省「宅地建物取引業法施行規則の一部を改正する省令」2025年1月1日施行 https://www.mlit.go.jp/totikensangyo/const/1_6_bt_000268.html

ステップ4:売却活動・物件探し

売主側であれば不動産会社が広告活動を行い、買主側であれば条件に合う物件を探します。

私の経験では、購入希望者が物件を見学する回数は平均して2〜3件程度です。事前にネットで情報収集を行い、候補を絞ってから内覧に臨む方が増えています。

ステップ5:売買契約の締結

買主が決まったら、売買契約を締結します。契約当日の流れは以下の通りです。

  1. 重要事項説明:宅地建物取引士が物件の詳細を説明

  2. 売買契約書の確認・署名捺印

  3. 手付金の授受

契約当日は2〜3時間程度かかることが一般的です。私がお客様に必ずお伝えしているのは、「重要事項説明書は事前にコピーをもらい、内容を確認しておくこと」です。当日は緊張もあり、全てを理解することは難しいためです。

ステップ6:住宅ローンの本審査・各種手続き

買主は住宅ローンの本審査を受け、売主は抵当権抹消の準備などを進めます。

ステップ7:決済・引き渡し

売買代金の支払い、所有権移転登記、鍵の引き渡しを行い、取引が完了します。


物件選びで失敗しないための5つのポイント

私が10年以上の実務経験で感じた、物件選びで失敗しないためのポイントをお伝えします。

1. 優先順位を明確にする

「駅近」「広さ」「価格」など、希望条件をすべて満たす物件を見つけることは現実的には困難です。私がお客様にアドバイスしているのは、条件を「絶対に譲れない条件」と「あれば嬉しい条件」に分けることです。

2. 将来の資産価値を考える

2025年の公示地価によると、全国的に地価は上昇傾向にあり、特に都市部や交通利便性の高いエリアで顕著です。ただし、地域によって大きな差があるため、将来の資産価値も考慮した物件選びが重要です。

(参考:国土交通省「令和7年地価公示」2025年3月発表)

3. ハザードマップを必ず確認する

2020年8月より、不動産取引の重要事項説明において水害ハザードマップの説明が義務化されました。私は必ずハザードマップを用いて、浸水リスクや土砂災害リスクについてご説明しています。

(参考:国土交通省「水防法に基づく水害ハザードマップ」)

4. 周辺環境は時間帯を変えて確認する

平日と休日、昼と夜では周辺環境の印象が大きく異なることがあります。可能であれば、複数の時間帯で現地を確認することをおすすめしています。

5. 建物の状態を専門家に診てもらう

中古住宅の場合、建物状況調査(インスペクション)の活用を検討してください。2018年4月より、宅建業者は建物状況調査のあっせんの有無を説明することが義務付けられています。


最新の法改正|売買取引で知っておくべき変更点

不動産売買に関連する制度は、近年大きく変わっています。私が実務で特に重要だと感じている改正点をご紹介します。

2025年1月施行:レインズ登録事項の追加(囲い込み防止)

専任媒介契約・専属専任媒介契約を締結した場合、これまでもレインズへの物件情報登録は義務でしたが、2025年1月からは「取引の申込みの受付に関する状況」の登録も義務化されました。

これにより、不動産会社が自社の顧客だけに物件を紹介する「囲い込み」が抑制され、売主にとってより早く、より良い条件での売却が期待できるようになりました。登録内容が事実と異なる場合、行政処分の対象となります。

(参考:国土交通省「宅地建物取引業法施行規則の一部を改正する省令」2025年1月1日施行)

2024年4月施行:相続登記の義務化

不動産を相続した場合、相続の開始を知った日から3年以内に相続登記を申請する義務が発生しました。正当な理由なく申請を怠った場合、10万円以下の過料が科される可能性があります。

私のところにも、「相続した土地の登記をしていない」というご相談が増えています。2024年4月以前に相続が発生していた場合でも、この義務は適用されますのでご注意ください。

(参考:法務省「相続登記の申請義務化」2024年4月1日施行)

2024年7月施行:低廉な空家等の媒介報酬特例の拡大

売買価格が800万円以下の物件について、不動産業者が受け取れる仲介手数料の上限が最大30万円(税抜)に引き上げられました。これにより、低価格帯の空き家や古家付き土地の流通促進が期待されています。

2025年4月施行:省エネ基準適合の義務化

原則すべての新築住宅・建築物について、省エネ基準への適合が義務化されました。これは新築だけでなく増改築も対象となります。購入後のリフォームを検討されている方は、この点にも留意が必要です。

(参考:国土交通省「建築物省エネ法の概要」2025年4月1日施行)


静岡市での不動産売買|地域特性と実例紹介

私は静岡市で10年以上、不動産取引に携わってきました。地元だからこそわかる、静岡市の不動産事情をお伝えします。

静岡市の地価動向

2025年の公示地価によると、静岡市の地価総平均は16万8,212円/㎡(坪単価約55万6,074円)で、前年比+0.94%の上昇となっています。

特筆すべきは、静岡市葵区の商業地が43年連続で県内最高地点を維持していることです。静岡駅周辺の呉服町エリア(葵区呉服町2丁目6番8)は148万円/㎡と、非常に高い水準を保っています。

一方、住宅地の最高地点は駿河区曲金6丁目で、7年連続でトップとなっています。東静岡駅周辺の利便性の高さが評価されている形です。

(参考:国土交通省「令和7年地価公示」静岡市分 2025年3月発表)

静岡市で私が実感していること

私が日々の業務で感じているのは、静岡市では「利便性」と「災害リスク」のバランスを重視するお客様が多いということです。

沿岸部は東日本大震災以降、津波リスクへの意識が高まり、内陸部への需要がシフトしています。私がお客様にご提案する際も、必ずハザードマップを確認し、リスクについてご説明するようにしています。

最近の相談事例から

2024年後半から2025年にかけて、私のもとには「親から相続した家をどうすればいいか」というご相談が増えています。相続登記の義務化が影響していると思われます。

ある70代のお客様は、亡くなったご両親名義のままだった葵区の土地について、「期限があると知って慌てて相談に来た」とおっしゃっていました。相続登記と売却を同時に進め、無事に取引を完了できましたが、早めのご相談をおすすめしています。


よくある誤解と注意点

誤解1:「不動産会社に任せておけば大丈夫」

不動産会社はあくまでも仲介役です。最終的な判断はご自身で行う必要があります。重要事項説明の内容、契約書の条項など、不明な点は必ず質問してください。私が担当させていただく際も、「わからないことは遠慮なく聞いてください」とお伝えしています。

誤解2:「査定価格=売れる価格」

査定価格はあくまでも目安です。実際の成約価格は、市場状況や買主との交渉によって変動します。私の経験では、査定価格の90〜100%程度で成約するケースが多いですが、物件や時期によって大きく異なります。

誤解3:「契約したら後戻りできない」

売買契約には「手付解除」という制度があります。買主は手付金を放棄、売主は手付金の倍額を返還することで、一定期間内であれば契約を解除できます。ただし、期限や条件がありますので、契約書をよく確認してください。

また、住宅ローンの審査に通らなかった場合は、「住宅ローン特約」により白紙解除となるのが一般的です。

注意点:契約不適合責任について

2020年の民法改正により、「瑕疵担保責任」は「契約不適合責任」に変わりました。引き渡し後に物件に不具合が見つかった場合、売主が責任を負う可能性があります。売主・買主双方にとって、物件状態を正確に把握し、書面に残しておくことが重要です。


よくある質問(FAQ)

Q1. 不動産売買にかかる費用はどのくらいですか?

A. 購入の場合、物件価格の他に以下の費用がかかります。

  • 仲介手数料:物件価格×3%+6万円+消費税(400万円超の場合)

  • 登記費用:数十万円程度

  • 住宅ローン関連費用:数十万円程度

  • その他:印紙代、火災保険料など

目安として、物件価格の5〜7%程度を諸費用として見込んでおくと安心です。

Q2. 売却にはどのくらいの期間がかかりますか?

A. 一般的に5〜6ヶ月程度ですが、物件の条件や市場状況によって大きく異なります。私の経験では、適正価格で売り出した場合、3ヶ月程度で成約するケースも多くあります。

Q3. 最新の法改正で気をつけるべきことは?

A. 2025年1月時点で、以下の改正が特に重要です。

  • 相続登記の義務化(2024年4月〜):相続から3年以内の登記申請が必要

  • レインズ登録の厳格化(2025年1月〜):囲い込み防止のための取引状況登録義務化

  • 省エネ基準の義務化(2025年4月〜):新築・増改築時に適用

法改正は随時行われますので、取引前に最新情報をご確認ください。

Q4. 不動産会社はどうやって選べばいいですか?

A. 複数の会社に査定を依頼し、対応を比較することをおすすめします。私が考える良い不動産会社の条件は、「説明が丁寧」「デメリットも正直に伝える」「質問にすぐ答えられる」の3点です。


まとめ

不動産売買は、人生で何度も経験することではありません。だからこそ、基本的な流れや最新の法改正を理解し、信頼できる専門家と一緒に進めることが大切です。

私が宅建士として常に心がけているのは、「お客様が納得して判断できる情報を提供すること」です。不明な点があれば、遠慮なくご相談ください。

この記事の情報は2025年1月時点のものです。法改正や市場動向は変化しますので、最新情報は各公的機関のサイトや専門家にご確認ください。


参照元・出典一覧

  1. 国土交通省「宅地建物取引業法 法令改正・解釈について」 https://www.mlit.go.jp/totikensangyo/const/1_6_bt_000268.html

  2. 国土交通省「不動産情報ライブラリ」 https://www.reinfolib.mlit.go.jp/

  3. 国土交通省「令和7年地価公示」 https://www.mlit.go.jp/totikensangyo/totikensangyo_tk5_000086.html

  4. 法務省「相続登記の申請義務化について」 https://www.moj.go.jp/MINJI/minji05_00343.html

  5. 静岡県公式ホームページ「令和6年地価公示結果」 https://www.pref.shizuoka.jp/machizukuri/tochiriyou/chikachousa/1061343.html

  6. 静岡市公式ホームページ「地価情報(地価公示・地価調査)」 https://www.city.shizuoka.lg.jp/s9465/s012530.html