家を借りる初期費用の相場と内訳|宅建士が解説

目次

  1. 賃貸の初期費用とは?基本的な定義と相場

  2. 初期費用の内訳を詳しく解説

  3. 初期費用の計算例|家賃別シミュレーション

  4. 初期費用に関する法的根拠と注意点

  5. 初期費用を抑える方法

  6. よくある誤解と注意点

  7. よくある質問(FAQ)


賃貸の初期費用とは?基本的な定義と相場

賃貸住宅を契約する際、毎月の家賃とは別に「初期費用」と呼ばれるまとまった費用が必要になります。

私が日々お客様にご説明している際、まず最初にお伝えするのは「初期費用とは、入居するために契約時に一括で支払う諸費用の総称」であるということです。敷金、礼金、仲介手数料、前家賃、火災保険料、保証会社利用料などが含まれ、これらを合計すると相当な金額になります。

初期費用の相場はいくら?

一般的な目安として、初期費用の総額は家賃の4.5〜6ヶ月分程度と考えておくと安心です。たとえば家賃7万円の物件であれば30〜40万円前後、家賃10万円なら45〜60万円程度を想定しておく必要があります。

ただし、これはあくまで目安であり、物件や契約条件によって大きく変動します。私が静岡市で担当させていただくお客様には、「見積書が届いたら、まず総額を確認してください。予想より高ければ、何が原因か一緒に確認しましょう」とお伝えしています。


初期費用の内訳を詳しく解説

敷金(家賃の0〜2ヶ月分)

敷金とは、退去時の原状回復費用や家賃滞納に備えて、貸主に預けるお金です。重要なのは、敷金は「預り金」であるという点。退去時に原状回復費用などを精算した後、残額は返還されます。

2020年4月施行の改正民法第622条の2では、敷金について「いかなる名目によるかを問わず、賃料債務その他の賃貸借に基づいて生ずる賃借人の賃貸人に対する金銭の給付を目的とする債務を担保する目的で、賃借人が賃貸人に交付する金銭」と定義されました。(参考:e-Gov法令検索「民法」2025年1月確認 https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=129AC0000000089

礼金(家賃の0〜1ヶ月分)

礼金は貸主へのお礼として支払う費用で、敷金と異なり退去時に返還されません。近年は礼金ゼロの物件も増えており、私の経験では静岡市内でも礼金なしの物件は珍しくなくなりました。

仲介手数料(家賃の0.5〜1ヶ月分+消費税)

宅地建物取引業法第46条に基づく国土交通省告示により、居住用建物の賃貸借における仲介手数料は、貸主・借主の双方から受け取る合計額が「借賃の1ヶ月分+消費税」以内と定められています。(参考:国土交通省「不動産取引に関するお知らせ」2025年1月確認 https://www.mlit.go.jp/totikensangyo/const/1_6_bf_000013.html

さらに居住用建物の場合、原則として依頼者の一方から受領できる報酬は「借賃の0.5ヶ月分+消費税」以内とされています。ただし、媒介の依頼を受けるにあたって依頼者の承諾を得ている場合は、1ヶ月分まで受領可能です。

前家賃(家賃1ヶ月分+日割り家賃)

契約時に翌月分の家賃を前払いするのが一般的です。月の途中から入居する場合は、入居月の日割り家賃も必要になります。

火災保険料(1.5〜2万円程度)

賃貸住宅では火災保険への加入が必須とされています。保険料は2年契約で1.5〜2万円程度が相場です。不動産会社から指定されることが多いですが、自分で保険会社を選べるケースもありますので、契約前に確認してみてください。

保証会社利用料(家賃の50〜100%)

現在、賃貸物件の約80%以上で保証会社の利用が必須となっています。保証会社は、入居者が家賃を滞納した際に貸主へ立替払いを行う会社で、初回保証料は家賃の50〜100%程度、更新保証料は1年ごとに1万円程度が相場です。(参考:日本賃貸住宅管理協会「日管協短観」)

鍵交換費用(1〜3万円程度)

セキュリティの観点から、入居前に鍵を交換する費用です。任意の場合もありますが、防犯上は交換をお勧めします。


初期費用の計算例|家賃別シミュレーション

具体的なイメージを持っていただくため、家賃7万円・管理費5,000円の物件を例に計算してみましょう。

【計算例:家賃7万円、管理費5,000円の場合】

項目

金額

敷金(1ヶ月分)

70,000円

礼金(1ヶ月分)

70,000円

仲介手数料(1ヶ月分+税)

77,000円

前家賃(1ヶ月分)

75,000円

日割り家賃(15日分想定)

37,500円

火災保険料(2年分)

18,000円

保証会社利用料(50%)

37,500円

鍵交換費用

16,500円

合計

約401,500円

この例では家賃の約5.3ヶ月分となります。敷金・礼金がゼロの物件であれば、これより14万円ほど安くなります。


初期費用に関する法的根拠と注意点

敷金と原状回復のルール(民法改正)

2020年4月施行の改正民法第621条では、賃借人の原状回復義務について次のように明文化されました。

「賃借人は、賃借物を受け取った後にこれに生じた損傷(通常の使用及び収益によって生じた賃借物の損耗並びに賃借物の経年変化を除く。)がある場合において、賃貸借が終了したときは、その損傷を原状に復する義務を負う。」(引用:民法第621条、2025年1月時点で有効)

つまり、通常の使用による損耗(通常損耗)や経年変化については、賃借人が原状回復義務を負わないことが法律で明確になりました。これは国土交通省の「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」の考え方を法制化したものです。(参考:国土交通省「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」2025年1月確認 https://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/house/jutakukentiku_house_tk3_000020.html

原状回復の具体例

私がお客様に説明する際は、「普通に暮らしていて生じる汚れや傷は、大家さんの負担です」とシンプルにお伝えしています。

貸主負担となるもの(通常損耗・経年変化)の例:

  • 日照による壁紙やフローリングの日焼け

  • 家具設置による床やカーペットのへこみ

  • テレビや冷蔵庫の後部壁面の黒ずみ(電気焼け)

  • 画鋲やピンによる壁の小さな穴

借主負担となるもの(故意・過失)の例:

  • タバコのヤニによる壁紙の変色

  • ペットがつけた柱の傷

  • 子供の落書き

  • 引越し作業で生じた傷


初期費用を抑える方法

敷金・礼金ゼロ物件を探す

近年は「ゼロゼロ物件」と呼ばれる敷金・礼金なしの物件が増えています。ただし注意点として、その分を「クリーニング費用」「短期解約違約金」など別の名目で設定しているケースもあります。契約書の内容を必ず確認してください。

閑散期(4〜8月)を狙う

1〜3月は引越しの繁忙期で、条件交渉が難しくなります。一方、4〜8月は空室が目立つため、大家さんも条件を柔軟にする傾向があります。私の経験では、同じ家賃帯の物件でも繁忙期と閑散期で初期費用に10万円以上の差が出ることがあります。

フリーレント物件を探す

フリーレントとは、契約後の一定期間(1〜2ヶ月程度)の家賃が無料になる制度です。前家賃の負担が軽減されるため、初期費用を抑えたい方には有効な選択肢です。

仲介手数料の確認

先述のとおり、居住用建物の仲介手数料は原則0.5ヶ月分です。1ヶ月分を請求される場合は、媒介契約時に承諾が必要です。契約前に確認し、交渉の余地がないか相談してみましょう。


よくある誤解と注意点

「敷金は全額戻ってこない」は誤解

敷金は預り金であり、原状回復費用を差し引いた残額は返還されます。民法改正により通常損耗は借主負担でないことが明確化されましたので、退去時に不当な請求があった場合は、ガイドラインを根拠に交渉できます。

「保証会社に加入すれば連帯保証人は不要」とは限らない

保証会社は家賃滞納時の金銭的保証を行いますが、入居中のトラブル(騒音など)には対応できません。そのため、保証会社に加えて連帯保証人を求められるケースもあります。

「初期費用は現金一括」とは限らない

不動産会社によってはクレジットカード払いや分割払いに対応している場合もあります。ただし、分割払いには利息や手数料がかかる点に注意してください。


よくある質問(FAQ)

Q: 初期費用はいつまでに支払う必要がありますか?

A: 一般的に、入居審査通過後から1週間〜10日程度が支払い期限です。契約日までに支払いが完了していないと入居できませんので、資金準備は早めに行いましょう。

Q: 2020年の民法改正で何が変わりましたか?

A: 敷金の定義と賃借人の原状回復義務が法律で明文化されました。通常損耗や経年変化は借主の原状回復義務から除外されることが明確になり、退去時のトラブル防止に役立っています。

Q: 保証会社の審査に落ちることはありますか?

A: 過去の家賃滞納歴や信用情報に問題がある場合、審査に通らないことがあります。その場合は、別の保証会社を利用できる物件を探すか、連帯保証人を立てることで契約できる可能性があります。

Q: 初期費用の見積書で確認すべきポイントは?

A: 各項目の金額が相場と比べて妥当か、「契約手数料」「事務手数料」など不明瞭な項目がないか、退去時の費用(クリーニング代など)が含まれていないかを確認してください。分からない項目があれば、遠慮なく不動産会社に質問しましょう。


本記事の情報について

本記事は2025年1月時点の情報に基づいています。法令や相場は変更される可能性がありますので、契約前に最新情報をご確認ください。


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著者情報

佐須陽介

佐須陽介

代表・宅地建物取引士

宅地建物取引士(静岡) 第 025298号 賃貸不動産経営管理士(2)第 059325号 住宅ローンアドバイザー

業界歴15

静岡市出身、現在は静岡市を拠点に不動産仲介・コンサルティング業務を手掛けています。これまで新築・中古マンション、戸建、賃貸管理まで幅広く携わってきました。

数多くのお客様の住まい選びをサポート。住宅ローンの借り換え支援なども含め、現実的な選択肢を提示することに定評があります。

得意分野: 不動産仲介、住宅ローンアドバイス、賃貸管理、不動産コンサルティング
趣味: 釣り、映画鑑賞、子どもと過ごす時間。休日には街を歩きながら、地域の魅力を再発見することが楽しみです。

静岡市を拠点に不動産仲介・コンサルティング業務を手掛けています。私自身もかつて住宅ローンの借り換えを経験し、「数字に強く、現実的な選択肢を示すこと」を常に心がけています。代表メッセージ(Authentill Style)にあるように、お客様に寄り添い、安心できる住まい選びを一緒に進めたいと心から願っています。

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