【2025年版】事業用物件の売買とは?宅建士が取引の流れ・税金・注意点を徹底解説

目次

  1. 事業用物件の売買とは?基本的な定義

  2. 事業用物件売買のメリットと活用場面

  3. 取引の流れ・具体的な手順

  4. 仲介手数料・税金・諸費用の計算方法

  5. よくある誤解・注意すべきポイント

  6. 実務での活用方法と成功のコツ

  7. よくある質問(FAQ)

  8. まとめ・参照リンク一覧


事業用物件の売買とは?基本的な定義

事業用物件とは、店舗・事務所・倉庫・工場・収益ビルなど、事業活動を目的として利用される不動産を指します。居住用物件とは異なり、法律上・税務上の取り扱いが大きく異なる点が特徴です。

私が宅建士として日々お客様にご説明する際には、「住むための家ではなく、商売や事業に使うための建物・土地です」とお伝えしています。静岡市内でも駅前の店舗ビルや郊外の物流倉庫など、さまざまな事業用物件が取引されています。

事業用物件の売買は、宅地建物取引業法(宅建業法)の規制を受けます。宅建業法第35条では、売買契約の締結前に宅地建物取引士による重要事項説明が義務付けられています(参考:国土交通省「宅地建物取引業法の解釈・運用の考え方」2025年4月施行版 https://www.mlit.go.jp/totikensangyo/const/1_6_bt_000268.html )。

2025年1月時点でも、この基本的な枠組みに変更はありません。


事業用物件売買のメリットと活用場面

事業用物件を購入するメリット

事業用物件の購入には、賃借と比較して以下のような利点があります。

まず、毎月の賃料支出がなくなり、長期的なコスト削減につながります。私が担当したお客様で、静岡市葵区で事務所を購入された方は「10年単位で考えると、購入したほうが結果的に安くなった」とおっしゃっていました。

また、自社所有の物件は担保として融資を受ける際にも活用できます。事業拡大の資金調達において、不動産担保は有力な選択肢となります。

事業用物件を売却するメリット

一方、事業用物件を売却する場面としては、事業の縮小・移転、資金需要への対応、相続対策などが挙げられます。

2025年の市場環境では、物流施設や郊外型の事業用地への需要が高まっており、適切なタイミングでの売却により好条件での取引が期待できるケースもあります。


取引の流れ・具体的な手順

事業用物件の売買は、概ね以下の流れで進行します。

STEP1:物件調査・価格査定

売却の場合は、まず不動産会社に査定を依頼します。事業用物件では、収益性(利回り)や立地条件、建物の状態などが重要な評価ポイントとなります。

購入の場合は、希望条件を明確にし、複数の物件を比較検討します。

STEP2:媒介契約の締結

売主と不動産会社の間で媒介契約を結びます。専属専任媒介・専任媒介・一般媒介の3種類があり、それぞれ特徴が異なります。

2025年1月施行の宅建業法施行規則改正により、レインズ(不動産流通標準情報システム)への物件取引状況登録が強化され、囲い込み防止策が講じられています(参考:国土交通省「宅地建物取引業法施行規則の一部を改正する省令」令和6年国土交通省令第70号 https://www.mlit.go.jp/totikensangyo/const/1_6_bt_000268.html )。

STEP3:重要事項説明

売買契約の締結前に、宅地建物取引士から重要事項説明を受けます。事業用物件の場合、用途地域や建ぺい率・容積率の制限、接道状況、設備の状態などが重要なチェックポイントです。

私の経験では、ここで「聞いていなかった」というトラブルが発生するケースが最も多いため、疑問点は必ずその場で確認することをお勧めしています。

STEP4:売買契約の締結

重要事項説明に納得したら、売買契約を締結します。手付金は売買代金の5%~10%程度が一般的です。

STEP5:決済・引渡し

残代金の支払いと同時に、所有権移転登記を行い、物件の引渡しを受けます。


仲介手数料・税金・諸費用の計算方法

仲介手数料

不動産売買の仲介手数料は、宅建業法で上限が定められています。

800万円を超える物件の場合、計算式は以下のとおりです。

仲介手数料の上限額 = 売買価格 × 3% + 6万円 + 消費税

例えば、5,000万円の事業用物件を売買する場合: 5,000万円 × 3% + 6万円 = 156万円(税抜) 156万円 × 1.1 = 171.6万円(税込)

2024年7月1日施行の報酬規定改正により、800万円以下の物件については、仲介手数料の上限が売主・買主双方からそれぞれ最大33万円(税込)に引き上げられました(参考:国土交通省「宅地建物取引業者が宅地又は建物の売買等に関して受けることができる報酬の額」改正告示 https://www.mlit.go.jp/totikensangyo/const/1_6_bt_000268.html )。

消費税・インボイス制度の影響

事業用物件の売買では、消費税の取り扱いに注意が必要です。

土地の売買は消費税非課税ですが、建物部分は課税対象(税率10%)となります。

2023年10月に施行されたインボイス制度(適格請求書等保存方式)により、事業者間の取引では適格請求書の有無が仕入税額控除に影響します。売主が免税事業者の場合、買主が課税事業者であれば仕入税額控除を受けられない可能性があるため、価格交渉に影響することがあります。

ただし、宅地建物取引業者が再販目的で免税事業者から建物を購入する場合は、インボイスがなくても帳簿のみの保存で仕入税額控除が認められます(参考:国税庁「適格請求書等保存方式に関するQ&A」問111)。

その他の諸費用

事業用物件の売買では、以下の費用も発生します。

  • 登録免許税(所有権移転登記)

  • 不動産取得税(購入時)

  • 印紙税(契約書への貼付)

  • 司法書士報酬

  • 固定資産税・都市計画税の精算金


よくある誤解・注意すべきポイント

誤解1:契約書に押印すれば「仮契約」である

私が実務で最もよく耳にする誤解がこれです。

不動産の売買契約においては「仮契約」という概念は存在せず、最初の契約が「本契約」です。認印であっても契約は有効に成立し、法的拘束力が生じます。

「とりあえず契約して、後から考えましょう」という勧誘には十分注意してください。

誤解2:契約不適合責任は免責できない

契約不適合責任(旧・瑕疵担保責任)は、2020年4月の民法改正により買主の権利が拡充されました。買主は追完請求・代金減額請求・損害賠償請求・契約解除の4つの権利を行使できます。

ただし、個人間売買や宅建業者が買主となる場合は、特約により責任を免責とすることも可能です。一方、宅建業者が売主となる場合は、引渡しから2年以上の期間を設けない限り、民法より買主に不利な特約は無効となります(宅建業法第40条)。

誤解3:事業用物件は住宅ローンが使える

事業用物件の購入には、原則として住宅ローンは利用できません。事業用ローンや不動産投資ローンを検討する必要があります。金利や審査基準が異なるため、事前に金融機関へ相談することをお勧めします。


実務での活用方法と成功のコツ

売却を成功させるポイント

私が静岡市で担当したオーナー様には、以下の3点を必ずお伝えしています。

1. 物件の状態を正確に把握し、契約書に明記する

契約不適合責任を問われるリスクを軽減するためには、建物の不具合や設備の状態を事前に調査し、売買契約書に明記することが重要です。

2. 適正価格での売り出し

相場からかけ離れた価格設定は、結果的に売却期間の長期化を招きます。複数の不動産会社から査定を受け、市場動向を踏まえた価格設定を心がけましょう。

3. 信頼できる不動産会社を選ぶ

2025年4月施行の宅建業法改正により、宅建業者票の記載事項が変更され、専任の宅地建物取引士の「数」が明示されるようになりました。透明性の高い業者を選ぶ一つの目安となります。

購入を成功させるポイント

1. 収益性と将来性を見極める

事業用物件は、立地・築年数・設備だけでなく、将来の賃貸需要や売却可能性も考慮して判断しましょう。

2. 重要事項説明を慎重に確認する

用途地域の制限、建築基準法上の制約、アスベストや土壌汚染の有無など、事業用物件特有の確認事項を見落とさないようにしましょう。


よくある質問(FAQ)

Q1. 2025年、事業用物件売買に関する法改正はありましたか?

A. 2025年1月1日施行のレインズ登録事項の追加(囲い込み防止強化)、2025年4月1日施行の宅建業者票の記載事項変更(専任宅建士の数を明示)などがあります。消費税やインボイス制度については、経過措置期間(2026年9月まで2割特例、2029年9月まで50%控除可能)が継続しています。

Q2. 仲介手数料は値引き交渉できますか?

A. 仲介手数料は上限が定められていますが、下限の規定はありません。不動産会社によっては交渉に応じる場合もあります。ただし、サービスの質とのバランスを考慮して判断することをお勧めします。

Q3. 事業用物件の売買で気をつけるべき税金は?

A. 売却益が出た場合の譲渡所得税(法人の場合は法人税)、購入時の不動産取得税、建物部分にかかる消費税などが主なものです。特に消費税は金額が大きくなりやすいため、インボイス制度の影響も含めて税理士に相談することをお勧めします。


まとめ

事業用物件の売買は、居住用物件とは異なる法律・税務上の知識が求められます。2025年においても、宅建業法の改正やインボイス制度の経過措置など、確認すべき最新情報は多岐にわたります。

売買を検討される際は、信頼できる宅建士・不動産会社に相談し、重要事項説明を十分に理解したうえで契約を締結することが大切です。

本記事の情報は2025年1月時点のものです。法改正や制度変更により内容が変わる可能性がありますので、最新情報は国土交通省・国税庁の公式サイトでご確認ください。

著者情報

佐須陽介

佐須陽介

代表・宅地建物取引士

宅地建物取引士(静岡) 第 025298号 賃貸不動産経営管理士(2)第 059325号 住宅ローンアドバイザー

業界歴15

静岡市出身、現在は静岡市を拠点に不動産仲介・コンサルティング業務を手掛けています。これまで新築・中古マンション、戸建、賃貸管理まで幅広く携わってきました。

数多くのお客様の住まい選びをサポート。住宅ローンの借り換え支援なども含め、現実的な選択肢を提示することに定評があります。

得意分野: 不動産仲介、住宅ローンアドバイス、賃貸管理、不動産コンサルティング
趣味: 釣り、映画鑑賞、子どもと過ごす時間。休日には街を歩きながら、地域の魅力を再発見することが楽しみです。

静岡市を拠点に不動産仲介・コンサルティング業務を手掛けています。私自身もかつて住宅ローンの借り換えを経験し、「数字に強く、現実的な選択肢を示すこと」を常に心がけています。代表メッセージ(Authentill Style)にあるように、お客様に寄り添い、安心できる住まい選びを一緒に進めたいと心から願っています。

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