貸家建付地とは?評価方法と相続税対策を宅建士が解説
目次
貸家建付地とは?基本的な定義
貸家建付地の評価方法と計算式
貸家建付地のメリット|相続税対策としての効果
具体的な計算例|静岡市での事例
よくある誤解と注意点
小規模宅地等の特例との併用
よくある質問(FAQ)
貸家建付地とは?基本的な定義
国税庁による定義
私が相続の相談を受ける際、まず最初に確認するのが「その土地はどのように使われていますか?」という点です。
国税庁のタックスアンサーでは、貸家建付地について次のように定義されています。
「貸家建付地とは、貸家の敷地の用に供されている宅地、例えば、その宅地を所有する方が建築したアパートやビルなどを他に貸し付けている場合の、その敷地である宅地をいいます」(参考:国税庁「No.4614 貸家建付地の評価」令和7年4月1日現在法令等 https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/hyoka/4614.htm)
つまり、ご自身の土地にアパートや賃貸マンションを建てて、第三者に貸している場合の土地が「貸家建付地」に該当します。
宅建士としてのわかりやすい説明
私がお客様に説明する際は、こうお伝えしています。
「自分で自由に使える土地と、入居者さんがいて自由に使えない土地では、価値が違いますよね。入居者さんには『借家権』という権利がありますから、オーナー様といえども簡単に追い出すことはできません。その分、相続税評価額も下がるんです」
これが貸家建付地の評価減の基本的な考え方です。
貸家建付地に該当しないケース
注意が必要なのは、すべての賃貸物件の敷地が貸家建付地になるわけではないという点です。
国税庁は「借家権の目的となっている家屋の敷地の用に供されている宅地」と明記しており、たとえば社宅の敷地は一般的に借地借家法の適用がないとされているため、貸家建付地ではなく自用地として評価されます。
貸家建付地の評価方法と計算式
基本の計算式
貸家建付地の相続税評価額は、次の計算式で求めます。
貸家建付地の価額 = 自用地としての価額 ×(1 - 借地権割合 × 借家権割合 × 賃貸割合)
(参考:国税庁「財産評価基本通達」26、令和7年4月1日現在法令等 https://www.nta.go.jp/law/tsutatsu/kihon/sisan/hyoka_new/02/05.htm)
私の経験では、この計算式を見て「難しそう」と感じる方が多いのですが、一つずつ確認すれば決して複雑ではありません。
借地権割合とは
借地権割合は、土地の評価額のうち借地権が占める割合です。地域によって30%〜90%まで異なり、都市部ほど高い傾向があります。
国税庁の「財産評価基準書 路線価図・評価倍率表」で確認でき、路線価図上のアルファベット(A〜G)で表示されています。
記号 | 借地権割合 |
A | 90% |
B | 80% |
C | 70% |
D | 60% |
E | 50% |
F | 40% |
G | 30% |
静岡市の場合、駅前の商業地域ではC(70%)やD(60%)が多く、郊外の住宅地ではE(50%)やF(40%)が一般的です。
借家権割合とは
借家権割合は、建物を借りている人の権利が占める割合です。こちらは全国一律で30%と定められています。(参考:国税庁「財産評価基準書」令和7年分)
賃貸割合とは
賃貸割合は、建物のうち実際に賃貸されている部分の割合です。
賃貸割合 = 課税時期において賃貸されている各独立部分の床面積の合計 ÷ 各独立部分の床面積の合計
たとえば、10室あるアパートで8室が賃貸中、2室が空室の場合、賃貸割合は80%となります。
貸家建付地のメリット|相続税対策としての効果
評価額がどれくらい下がるか
貸家建付地の評価減率を計算してみましょう。
借地権割合が60%(D地区)、借家権割合が30%、満室経営(賃貸割合100%)の場合:
評価減率 = 60% × 30% × 100% = 18%
つまり、自用地評価額から18%減額されることになります。
借地権割合が70%(C地区)の場合は:
評価減率 = 70% × 30% × 100% = 21%
都市部の商業地域では、最大で約27%(借地権割合90%の場合)の評価減が可能です。
建物の評価減も忘れずに
貸家建付地の評価減に加えて、賃貸物件の建物自体も「貸家」として評価減を受けられます。
貸家の評価額 = 固定資産税評価額 ×(1 - 借家権割合 × 賃貸割合)
借家権割合30%、満室の場合、建物は固定資産税評価額の70%で評価されます。
私が担当するオーナー様には、「土地と建物の両方で評価減が受けられるのが、賃貸経営の相続税メリットです」とお伝えしています。
具体的な計算例|静岡市での事例
ケーススタディ:静岡市葵区の賃貸アパート
私が実際に相談を受けた静岡市葵区の事例をもとに、計算してみましょう(個人情報保護のため数値は調整しています)。
【前提条件】
土地面積:200㎡
路線価:15万円/㎡(借地権割合D:60%)
建物:8室のアパート(各25㎡)
相続時の賃貸状況:7室入居、1室空室(一時的)
【計算】
STEP1:自用地評価額の算出 15万円 × 200㎡ = 3,000万円
STEP2:賃貸割合の算出 7室 ÷ 8室 = 87.5% ※この空室は退去後すぐに募集を開始しており、一時的な空室として扱えると判断
STEP3:貸家建付地評価額の算出 3,000万円 ×(1 - 60% × 30% × 87.5%) = 3,000万円 ×(1 - 15.75%) = 3,000万円 × 84.25% = 2,527万5,000円
自用地のままであれば3,000万円だった評価額が、約473万円減額されました。
よくある誤解と注意点
空室がある場合の取扱い
「相続のときに空室があると、その分は評価減を受けられないんですよね?」というご質問をよくいただきます。
結論から言うと、一時的な空室であれば賃貸中として扱えます。国税庁は次の4つの要件をすべて満たす場合、課税時期においても賃貸されていたものとして取り扱って差し支えないとしています。
課税時期前に継続的に賃貸されてきたこと
退去後速やかに新たな賃借人の募集が行われ、空室期間中は他の用途に供されていないこと
空室期間が課税時期の前後の例えば1か月程度であるなど、一時的な期間であること
課税時期後の賃貸が一時的なものではないこと
(参考:国税庁「No.4614 貸家建付地の評価」https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/hyoka/4614.htm)
私の実務経験では、「1か月程度」という基準が特に重要です。長期空室の場合は、賃貸割合から除外される可能性があります。
使用貸借は対象外
親族に無償または固定資産税程度の低額で貸している場合は、「使用貸借」となり、貸家建付地の評価減は適用できません。適正な家賃を設定する必要があります。
相続開始直前の駆け込み対策には注意
小規模宅地等の特例との関係で、相続開始前3年以内に新たに開始した貸付事業用の土地は、原則として特例の対象外となります。長期的な視点での対策が重要です。
小規模宅地等の特例との併用
貸付事業用宅地等として50%減額可能
貸家建付地は、一定の要件を満たせば「小規模宅地等の特例」の「貸付事業用宅地等」として、さらに評価額を減額できます。
限度面積:200㎡ 減額割合:50%
(参考:国税庁「No.4124 相続した事業の用や居住の用の宅地等の価額の特例(小規模宅地等の特例)」https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/sozoku/4124.htm)
併用した場合の効果
先ほどの静岡市葵区の例で、小規模宅地等の特例も適用した場合を計算してみましょう。
貸家建付地評価後:2,527万5,000円 小規模宅地等の特例適用後: 2,527万5,000円 × 50% = 1,263万7,500円
自用地評価額3,000万円が、約1,264万円まで圧縮されます。約58%の評価減です。
適用要件の確認
小規模宅地等の特例を適用するためには、主に以下の要件を満たす必要があります。
相続税の申告期限まで貸付事業を継続すること
相続税の申告期限までその宅地等を保有していること
相続開始前3年以内に新たに開始した貸付事業でないこと(例外あり)
要件は複雑なため、適用にあたっては税理士への相談をお勧めします。
よくある質問(FAQ)
Q1:2025年以降、貸家建付地の評価方法は変わりましたか?
A:2025年1月時点では、貸家建付地の基本的な評価方法に変更はありません。ただし、令和8年度税制改正大綱では、相続開始前5年以内に取得した貸付用不動産について、評価方法の見直しが検討されています。2027年1月1日以後の相続等から適用される見込みですので、今後の動向に注意が必要です。
Q2:賃貸マンションの1室を所有している場合も貸家建付地になりますか?
A:区分所有マンションの場合、「貸家建付地」ではなく、敷地権の持分に対して評価減が適用されます。考え方は同様ですが、令和6年1月1日以後に取得した居住用の区分所有財産(分譲マンション)については、別途「居住用の区分所有財産の評価」(国税庁タックスアンサーNo.4667)のルールが適用されます。
Q3:駐車場経営の土地は貸家建付地になりますか?
A:建物がない駐車場は「貸家建付地」には該当しません。ただし、小規模宅地等の特例の「貸付事業用宅地等」としては対象となる可能性があります。
Q4:相続税対策として今からアパートを建てるのは有効ですか?
A:評価減の効果はありますが、小規模宅地等の特例には「3年以内の貸付除外ルール」がありますので、早めの対策が重要です。また、賃貸経営にはリスクも伴いますので、相続税対策だけでなく、事業として成り立つかどうかも含めて検討することをお勧めします。
本記事の情報について
本記事は2025年1月時点の法令・通達に基づいています。税制は毎年改正される可能性がありますので、実際の申告にあたっては最新情報を国税庁ホームページ等でご確認の上、税理士等の専門家にご相談ください。
参照元URL一覧
国税庁「No.4614 貸家建付地の評価」https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/hyoka/4614.htm
国税庁「財産評価基本通達」(貸宅地の評価)https://www.nta.go.jp/law/tsutatsu/kihon/sisan/hyoka_new/02/05.htm
国税庁「財産評価基準書 路線価図・評価倍率表」https://www.rosenka.nta.go.jp
国税庁「No.4124 相続した事業の用や居住の用の宅地等の価額の特例(小規模宅地等の特例)」https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/sozoku/4124.htm
著者情報

佐須陽介
代表・宅地建物取引士
宅地建物取引士(静岡) 第 025298号 賃貸不動産経営管理士(2)第 059325号 住宅ローンアドバイザー
業界歴15年
静岡市出身、現在は静岡市を拠点に不動産仲介・コンサルティング業務を手掛けています。これまで新築・中古マンション、戸建、賃貸管理まで幅広く携わってきました。
数多くのお客様の住まい選びをサポート。住宅ローンの借り換え支援なども含め、現実的な選択肢を提示することに定評があります。
静岡市を拠点に不動産仲介・コンサルティング業務を手掛けています。私自身もかつて住宅ローンの借り換えを経験し、「数字に強く、現実的な選択肢を示すこと」を常に心がけています。代表メッセージ(Authentill Style)にあるように、お客様に寄り添い、安心できる住まい選びを一緒に進めたいと心から願っています。
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