貸家とは?戸建て賃貸経営のメリット・税金対策を解説
貸家とは?基本的な定義
貸家の意味
貸家とは、所有者が他人に貸して賃料収入を得る目的で運用する住宅のことです。一般的には一戸建て住宅を指すことが多く、「戸建て賃貸」とも呼ばれます。
私がオーナー様に説明する際は、「貸家というのは、ご自身で住むのではなく、他の方に住んでもらって家賃をいただく家のことです」とお伝えしています。
貸家には主に以下のパターンがあります。
1. 持ち家を貸す場合 転勤や相続で住まなくなった自宅を賃貸に出すケースです。私が担当した静岡市駿河区のオーナー様も、東京への転勤をきっかけに実家を貸家として活用されています。
2. 投資用に建築・購入する場合 土地活用や資産運用の目的で、新たに戸建てを建築または購入して賃貸に出すケースです。近年は空き家を購入してリノベーション後に貸し出す方も増えています。
アパート・マンションとの違い
貸家(戸建て賃貸)とアパート・マンション経営の大きな違いは、入居者が1世帯であることです。集合住宅と比べて収益規模は小さくなりますが、その分リスクも限定的で、個人オーナーでも始めやすいという特徴があります。
貸家経営の5つのメリット
1. 狭い土地でも始められる
アパートやマンションを建てるには一定の敷地面積が必要ですが、貸家なら30坪程度の土地でも建築可能です。
私が担当した静岡市葵区のオーナー様は、相続した50坪の土地を活用する方法を検討されていました。アパート建築には狭すぎましたが、戸建て賃貸なら十分に建築でき、月額12万円の家賃収入を得られるようになりました。
2. 長期入居が期待できる
貸家はファミリー層に人気があり、お子さんの学校区を変えたくないなどの理由から、入居期間が長くなる傾向があります。
私の経験では、戸建て賃貸の平均入居期間は5年以上になることが多いです。アパートの単身者向け物件と比較すると、入居者募集の手間や費用を抑えられます。
3. 初期投資を抑えやすい
アパート建築には数千万円から1億円以上の費用がかかることがありますが、貸家なら1,000万円台から建築可能です。既存の住宅を活用する場合は、リフォーム費用のみで始められます。
4. 出口戦略の選択肢が多い
貸家は売却時に複数の選択肢があります。入居者への売却、実需向け(マイホームとして)の売却、投資用物件としての売却など、状況に応じた出口戦略を取れるのが強みです。
私が担当したケースでは、10年間賃貸運用した後、入居者がそのまま購入を希望され、スムーズに売却できた事例もあります。
5. 相続税評価額の減額効果
貸家を建てている土地は「貸家建付地」として評価され、自用地(自分で使っている土地)と比べて相続税評価額が下がります。この点については後ほど詳しく解説します。
貸家経営のデメリット・注意点
貸家経営にはメリットがある一方で、注意すべきデメリットもあります。
1. 空室リスクが大きい
貸家は1世帯のみに貸すため、空室が発生すると収入がゼロになります。アパートのように複数戸でリスク分散ができないのが大きなデメリットです。
私が担当した静岡市清水区のオーナー様は、退去から次の入居者が決まるまで4ヶ月かかったことがあります。その間の収入はゼロでしたが、固定資産税やローン返済は続きます。
2. 修繕費用が高額になりやすい
戸建ては外壁、屋根、庭など、集合住宅にはない維持管理項目があります。長期入居の後に退去となると、一度にまとまった修繕費用が必要になることがあります。
実際に私が対応したケースでは、15年入居された後の原状回復工事で約150万円かかったことがあります。
3. マイホーム購入と競合する
貸家のターゲットであるファミリー層は、マイホーム購入を検討していることも多いです。住宅ローンの月々返済額と比較されることがあるため、家賃設定には注意が必要です。
例えば、3,000万円の住宅を35年ローン(金利1.5%)で購入すると、月々の返済額は約9万円程度です。戸建て賃貸の家賃がこれを大きく上回ると、競争力が低下します。
4. 管理が難しい場合がある
賃貸中はオーナーが物件に立ち入ることが基本的にできません。庭の手入れや外壁の状態など、入居者任せになる部分があります。
貸家建付地とは?相続税評価の計算方法
貸家建付地の定義
貸家建付地とは、自己所有の土地に賃貸用の建物を建て、第三者に貸している場合の土地のことです。アパート、マンション、戸建て賃貸など、賃貸物件が建っている土地がこれに該当します。
私がオーナー様に説明する際は、「自分で使える土地と、人に貸して自由に使えない土地では価値が違いますよね。だから相続税も安くなるんです」とお伝えしています。
(参考:国税庁「No.4614 貸家建付地の評価」 https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/hyoka/4614.htm )
貸家建付地の評価額の計算式
貸家建付地の相続税評価額は、以下の計算式で求めます。
貸家建付地の評価額 = 自用地としての価額 ×(1 - 借地権割合 × 借家権割合 × 賃貸割合)
各項目の意味は以下の通りです。
自用地としての価額:路線価方式または倍率方式で計算した土地の評価額
借地権割合:地域によって30%~90%(路線価図で確認可能)
借家権割合:全国一律30%
賃貸割合:実際に賃貸している床面積の割合(満室なら100%)
具体的な計算例
静岡市の一般的なエリアで、以下の条件で計算してみます。
自用地評価額:3,000万円
借地権割合:60%(静岡市内の住宅地で多い割合)
借家権割合:30%
賃貸割合:100%(満室)
貸家建付地の評価額 = 3,000万円 ×(1 - 60% × 30% × 100%)
= 3,000万円 ×(1 - 18%)
= 3,000万円 × 82%
= 2,460万円
自用地として評価すると3,000万円ですが、貸家建付地として評価すると2,460万円となり、540万円(18%)の評価減となります。
貸家(建物)の評価額
建物についても、賃貸していると評価額が下がります。
貸家の評価額 = 固定資産税評価額 ×(1 - 借家権割合 × 賃貸割合)
= 固定資産税評価額 ×(1 - 30% × 100%)
= 固定資産税評価額 × 70%
例えば、固定資産税評価額が1,000万円の建物なら、700万円で評価されます。
注意点
貸家建付地として評価されるためには、以下の条件を満たす必要があります。
相続開始時点で土地に賃貸物件が建っていること
相続開始時点で入居者がいること(または一時的な空室であること)
相場並みの賃料を受け取っていること
親族に無償で貸している場合(使用貸借)は、貸家建付地として評価されませんのでご注意ください。
貸家経営を成功させるポイント
1. エリアのニーズを把握する
貸家経営で最も重要なのは、そのエリアで戸建て賃貸の需要があるかどうかです。
私が静岡市で物件を扱う中で感じるのは、小中学校に近いエリアや、駐車場が必要なエリアで戸建て賃貸の需要が高いということです。逆に、駅前の利便性の高いエリアでは、単身者向けのマンションの方が需要があります。
2. 適正な家賃設定を行う
家賃が高すぎると入居者が決まらず、安すぎると収益性が悪化します。周辺の戸建て賃貸や、同程度の広さのマンションの家賃相場を調査することが重要です。
戸建て賃貸は参考物件が少ないエリアもありますので、不動産会社に相談することをお勧めします。
3. 空室対策を事前に計画する
貸家は1世帯のみなので、空室リスクへの備えが重要です。具体的には以下の対策が考えられます。
繁忙期(1月〜3月)を狙った入居者募集
ペット可にするなど競争力を高める工夫
入居者への売却提案(長期入居者には効果的)
複数の賃貸ポータルサイトへの掲載
4. 定期的なメンテナンスを行う
戸建ては外壁や屋根など、経年劣化する部分が多くあります。入居中でも、外部からの目視確認や、入居者への定期連絡を行い、大きなトラブルになる前に対処することが大切です。
5. 管理会社の選定を慎重に行う
戸建て賃貸に慣れた管理会社を選ぶことも重要です。集合住宅とは管理のポイントが異なるため、戸建て賃貸の実績がある会社に依頼することをお勧めします。
よくある質問(FAQ)
Q:貸家経営の利回りはどのくらいですか?
A:一般的には表面利回りで5%〜10%程度といわれています。ただし、これは物件の立地、築年数、購入価格などによって大きく異なります。
例えば、土地・建物を所有している状態で貸家にする場合は、建築費のみが投資額となるため、利回りは高くなります。逆に、土地から購入する場合は投資額が大きくなり、利回りは低下します。
Q:貸家経営は法人化した方が良いですか?
A:所得規模によります。一般的には、不動産所得が年間1,000万円を超えるあたりから法人化のメリットが出てくるといわれています。
貸家1〜2棟の規模であれば、個人での運用で問題ないケースがほとんどです。
Q:貸家にするか売却するか、どちらが良いですか?
A:これは物件の状態、立地、オーナー様の状況によって異なります。
私がご相談を受ける際は、以下の点を確認しています。
今後その土地・建物を使う予定があるか
継続的な収入と一時金、どちらが必要か
管理の手間をかけられるか
物件のエリアで賃貸需要があるか
これらを総合的に判断して、最適な選択をご提案しています。
Q:空き家を貸家にする際の注意点は?
A:空き家を貸家として活用する場合、以下の点に注意が必要です。
建物の状態確認(構造、設備、雨漏り等)
必要なリフォーム・修繕の見積もり
近隣への事前説明(長期間空き家だった場合)
火災保険の切り替え(住宅用から賃貸用へ)
私が担当したケースでは、10年以上空き家だった物件を500万円でリノベーションし、月額8万円の賃貸収入を得られるようになった事例があります。
Q:相続で取得した貸家、そのまま賃貸を続けるべきですか?
A:相続で取得した貸家をそのまま賃貸運用するか、売却するかは、以下の点を考慮して判断します。
相続税の納税資金は確保できているか
物件の築年数と今後の修繕費用
賃料収入と管理コストのバランス
相続人間での分割の必要性
相続に関することは、税理士との連携が重要です。ご希望があれば、当社でもご紹介可能です。
まとめ
貸家(戸建て賃貸)経営は、アパート・マンション経営と比べて小規模で始められ、長期入居が期待できるというメリットがあります。また、相続税対策としても「貸家建付地」の評価減が活用できます。
一方で、空室リスクが1戸に集中する点、修繕費用が高額になりやすい点には注意が必要です。
貸家経営を成功させるためには、エリアのニーズ把握、適正な家賃設定、空室対策の計画が重要です。戸建て賃貸に慣れた不動産会社と連携しながら進めることをお勧めします。
静岡市で貸家経営をお考えの方、相続した空き家の活用でお悩みの方は、ぜひ一度ご相談ください。物件の状態やエリアの特性を踏まえて、最適な活用方法をご提案いたします。
著者プロフィール
佐須陽介(さす ようすけ) 株式会社Authentill Style 代表取締役 宅地建物取引士(静岡)第025298号 賃貸不動産経営管理士(2)第059325号 住宅ローンアドバイザー
静岡市生まれ・静岡市育ち。賃貸仲介、賃貸管理、新築建売住宅販売、分譲マンション販売と幅広い実務経験を持つ。戸建て賃貸から大規模マンションまで、様々な物件の管理・運用をサポート。法令・税制の最新動向を常にキャッチアップし、オーナー様の資産活用をサポートしている。
参考文献
国税庁「No.4614 貸家建付地の評価」 https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/hyoka/4614.htm
国税庁「No.4602 土地家屋の評価」 https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/sozoku/4602.htm
全日本不動産協会「2025年の不動産市況の見通し」 https://magazine.zennichi.or.jp/commentary/20377
アットホーム「2025年の賃貸市場における4大ニュース」 https://athome-inc.jp/news/data/questionnaire/yondai-news-202512/
著者情報

佐須陽介
代表・宅地建物取引士
宅地建物取引士(静岡) 第 025298号 賃貸不動産経営管理士(2)第 059325号 住宅ローンアドバイザー
業界歴15年
静岡市出身、現在は静岡市を拠点に不動産仲介・コンサルティング業務を手掛けています。これまで新築・中古マンション、戸建、賃貸管理まで幅広く携わってきました。
数多くのお客様の住まい選びをサポート。住宅ローンの借り換え支援なども含め、現実的な選択肢を提示することに定評があります。
静岡市を拠点に不動産仲介・コンサルティング業務を手掛けています。私自身もかつて住宅ローンの借り換えを経験し、「数字に強く、現実的な選択肢を示すこと」を常に心がけています。代表メッセージ(Authentill Style)にあるように、お客様に寄り添い、安心できる住まい選びを一緒に進めたいと心から願っています。
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