売買物件引渡確認書は不要?宅建士が2025年最新情報で解説|省略できるケースと注意点

目次

  1. 売買物件引渡確認書とは?基本を押さえよう

  2. 物件引渡確認書に法的義務はあるのか?宅建業法と民法から解説

  3. 引渡確認書が「不要」と言われる3つのケース

  4. 省略した場合のリスクと注意点

  5. 作成する場合の記載項目とポイント

  6. よくある質問(FAQ)

  7. まとめ


売買物件引渡確認書とは?基本を押さえよう

引渡確認書の定義と目的

私が静岡市で不動産取引を担当していると、お客様から「引渡確認書って必ず作らないといけないんですか?」というご質問をよくいただきます。

結論から申し上げると、売買物件引渡確認書は法律で義務付けられた書類ではありません

売買物件引渡確認書とは、不動産の引渡しが完了したことを売主・買主双方が確認し、その事実を書面に残すための書類です。具体的には、引渡し完了日、鍵の本数、引き渡した書類の一覧などを記載し、双方が署名・押印します。

私は実務で、この書類を「取引の終着点を明確にするための安心材料」として説明しています。なぜなら、この書類があることで「いつ」「何を」引き渡したかが明確になり、後日のトラブルを防止できるからです。

(参考:不動産流通推進センター「不動産売買契約書の解説」2024年9月確認 https://iqrafudosan.com/channel/sales-contract-7


物件引渡確認書に法的義務はあるのか?宅建業法と民法から解説

宅地建物取引業法(宅建業法)の規定

宅建業法第37条では、不動産売買契約が成立した際に宅建業者が交付すべき書面(いわゆる「37条書面」)の記載事項を定めています。

37条書面の必要的記載事項には「物件の引渡しの時期」が含まれますが、「引渡確認書の作成」は義務付けられていません

「37条書面に『引渡しの時期』を記載することが必要的記載事項として定められています」

(引用:宅地建物取引業法 第37条第1項第4号、2025年1月時点で有効)

つまり、法律が求めているのは「いつ引き渡すか」を契約書に明記することであり、「引き渡したことを確認する別途の書面」の作成までは求めていないのです。

民法の規定

民法においても、不動産売買における引渡確認書の作成義務は規定されていません。

民法では、売買契約における売主の義務として目的物の引渡しが定められていますが、その方法や確認書類については当事者間の合意に委ねられています。

私は2025年1月現在の実務において、民法第533条(同時履行の抗弁権)の観点から、「代金全額の支払いと同時に引渡しを行う」という形が一般的であることをお客様に説明しています。

(参考:e-Gov法令検索「民法」2025年1月確認 https://laws.e-gov.go.jp/law/129AC0000000089

各不動産団体の契約書式の違い

ここで興味深いのは、不動産流通業界の主要4団体(FRK・宅建協会・全日・全住協)によって、契約書の様式が異なる点です。

FRK(不動産流通経営協会)の契約書では、引渡完了日を確定するために「売買物件引渡完了確認書」を作成する旨が明記されています。

一方、全宅連(全国宅地建物取引業協会連合会)の契約書では、そのような規定はなく、不動産会社独自の書面で引渡しの完了を確認することが一般的です。

私が実務で使用する際は、どちらの様式でも対応できるよう、お客様の状況に応じて柔軟に判断しています。


引渡確認書が「不要」と言われる3つのケース

ケース1:当事者間で合意がある場合

売主・買主双方が「引渡確認書は作成しない」と合意している場合、作成は不要です。ただし、この場合でも私は以下のような代替措置をお勧めしています。

  • 鍵受領書への署名

  • 残代金領収書の発行

  • 司法書士立会いのもとでの決済実施

2025年1月に担当した静岡市葵区の取引では、長年の知人同士の売買で「書類を簡素化したい」というご要望がありました。この場合、最低限の証拠として鍵受領書と領収書だけは作成していただくようお願いしました。

ケース2:所有権移転登記と同日の決済

残代金決済と引渡しが同日に行われ、司法書士が所有権移転登記の申請を行う場合、登記申請日が事実上の引渡完了日として機能します。

この場合、登記識別情報の発行日や司法書士の本人確認記録が引渡しの証拠となるため、別途の引渡確認書がなくても実務上の問題は少ないと言えます。

ケース3:契約書に引渡完了の確認方法が明記されている場合

売買契約書自体に「残代金受領をもって引渡し完了とする」などの文言が明記されている場合、その契約条項が引渡完了の証拠となります。


省略した場合のリスクと注意点

リスク1:契約不適合責任の起算日が曖昧になる

2020年4月の民法改正により「瑕疵担保責任」から「契約不適合責任」へと変更されました。契約不適合責任は引渡し後に売主が負う責任であり、その起算日を明確にすることが重要です。

引渡確認書がない場合、「いつ引き渡しが完了したのか」という点で争いになる可能性があります。

私の経験では、2024年に静岡市駿河区で「引渡日を明確にしていなかったため、設備の不具合について責任期間内かどうかで揉めた」というケースを見聞きしました。

リスク2:固定資産税等の精算日が不明確になる

固定資産税や都市計画税は、1月1日時点の所有者に課税されます。年度途中で売却する場合、引渡日を基準に売主・買主で日割り精算を行います。

引渡完了日が明確でないと、この精算金の計算根拠が曖昧になります。

リスク3:鍵や書類の引渡し状況が不明確になる

建物の鍵、建築確認済証、設備の保証書など、引渡し時には多くの物品・書類を受け渡します。引渡確認書がないと、「何を受け取ったか」が後日わからなくなるリスクがあります。


作成する場合の記載項目とポイント

基本的な記載項目

私が実務で作成する際は、以下の項目を必ず含めています。

  1. 物件の表示:所在地、地番、家屋番号等

  2. 引渡完了日:具体的な年月日

  3. 引き渡した鍵の本数:玄関、勝手口、車庫等の種類別

  4. 引き渡した書類一覧:権利証写し、建築関係書類、設備保証書等

  5. 残置物の有無:売主が残した物品の確認

  6. 売主・買主の署名押印

  7. 仲介業者の記名押印(仲介取引の場合)

2022年宅建業法改正への対応

2022年5月のデジタル改革関連法施行により、宅建業法も改正され、37条書面への押印が不要となり、電磁的方法による交付も認められるようになりました。

この改正を受けて、引渡確認書についても電子データでの作成・保存が実務上認められると解されています。ただし、後日のトラブル防止の観点から、私は可能な限り書面での作成をお勧めしています。

(参考:国土交通省「宅地建物取引業法の一部を改正する法律の施行について」2022年5月)


よくある質問(FAQ)

Q1:2025年、引渡確認書に関する法改正はありましたか?

A1: 2025年1月時点では、引渡確認書に関する新たな法改正はありません。2022年5月施行のデジタル改革関連法による宅建業法改正(押印不要化・電子交付解禁)が最新の改正となります。今後の法改正については国土交通省の公式サイトでご確認ください。

(参考:国土交通省「宅地建物取引業法の改正について」2025年1月確認 https://www.mlit.go.jp/totikensangyo/const/sosei_const_tk2_000026.html

Q2:個人間売買でも引渡確認書は必要ですか?

A2: 個人間売買(不動産会社の仲介なし)でも法的義務はありません。ただし、個人間売買は特にトラブルが起きやすいため、私は作成を強くお勧めしています。契約書のひな形はインターネットでダウンロードできますが、不安な場合は司法書士や行政書士への相談をお勧めします。

Q3:引渡確認書がないと住宅ローンに影響しますか?

A3: 基本的に影響はありません。住宅ローンの融資実行条件として金融機関が求めるのは、重要事項説明書、売買契約書、登記関連書類などであり、引渡確認書は通常含まれていません。

Q4:引渡確認書と鍵受領書の違いは何ですか?

A4: 鍵受領書は「鍵を受け取ったこと」を証明する書類です。引渡確認書は鍵だけでなく、書類一式の引渡し、物件の状態確認など、引渡し全体の完了を証明するより包括的な書類です。実務では両方を兼ねた様式を使用することもあります。


まとめ

本記事のポイントを整理します。

売買物件引渡確認書について

  • 法律(宅建業法・民法)で作成義務は規定されていない

  • FRK契約書では作成が定められているが、全宅連契約書では任意

  • 当事者間の合意があれば省略可能

省略する場合の注意点

  • 契約不適合責任の起算日が曖昧になるリスク

  • 固定資産税等の精算日が不明確になるリスク

  • 鍵・書類の引渡し状況が不明確になるリスク

私は宅建士として20年以上の実務経験から、「法的義務がない」ことと「作成しなくてよい」ことは別だと考えています。特に高額な不動産取引においては、後日のトラブルを防ぐための「保険」として、引渡確認書の作成をお勧めしています。

ご不明な点があれば、お近くの宅建業者または司法書士にご相談ください。


参照元URL一覧


免責事項 本記事の情報は2025年1月時点のものです。法令や税制は改正される可能性がありますので、実際の取引にあたっては最新の情報を国土交通省や国税庁の公式サイトでご確認いただくか、専門家にご相談ください。

著者情報

佐須陽介

佐須陽介

代表・宅地建物取引士

宅地建物取引士(静岡) 第 025298号 賃貸不動産経営管理士(2)第 059325号 住宅ローンアドバイザー

業界歴15

静岡市出身、現在は静岡市を拠点に不動産仲介・コンサルティング業務を手掛けています。これまで新築・中古マンション、戸建、賃貸管理まで幅広く携わってきました。

数多くのお客様の住まい選びをサポート。住宅ローンの借り換え支援なども含め、現実的な選択肢を提示することに定評があります。

得意分野: 不動産仲介、住宅ローンアドバイス、賃貸管理、不動産コンサルティング
趣味: 釣り、映画鑑賞、子どもと過ごす時間。休日には街を歩きながら、地域の魅力を再発見することが楽しみです。

静岡市を拠点に不動産仲介・コンサルティング業務を手掛けています。私自身もかつて住宅ローンの借り換えを経験し、「数字に強く、現実的な選択肢を示すこと」を常に心がけています。代表メッセージ(Authentill Style)にあるように、お客様に寄り添い、安心できる住まい選びを一緒に進めたいと心から願っています。

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