賃貸借契約書の見方|宅建士が教える確認ポイント9選

目次

  1. 賃貸借契約書とは?重要事項説明書との違い

  2. 契約前に確認すべき9つのポイント

  3. 民法改正で変わった3つのルール

  4. 電子契約・IT重説の注意点

  5. よくある失敗パターンと対処法

  6. よくある質問(FAQ)


賃貸借契約書とは?重要事項説明書との違い

賃貸借契約書の役割

賃貸借契約書とは、大家さん(貸主)と入居者(借主)の間で「この部屋を借りる・貸す」という約束を書面にしたものです。契約期間、家賃、敷金、禁止事項、解約条件など、入居中のルールがすべて記載されています。

私が契約の立会いをする際、「契約書って読まなくても大丈夫ですよね?」と聞かれることがあります。正直に申し上げると、契約書の内容を理解せずに署名・捺印してしまい、後からトラブルになるケースを何度も見てきました。

国土交通省では「賃貸住宅標準契約書」というひな形を公開しており、多くの不動産会社がこれをベースに契約書を作成しています。(参考:国土交通省「賃貸住宅標準契約書について」 https://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/house/jutakukentiku_house_tk3_000023.html

重要事項説明書との違い

賃貸契約では「賃貸借契約書」と「重要事項説明書」の2種類の書類に署名・捺印します。似た内容が書かれているため、「なぜ2つも必要なの?」と疑問に思う方も多いでしょう。

私がお客様に説明する際は、こうお伝えしています。「重要事項説明書は『この物件の説明書』、賃貸借契約書は『約束事をまとめた書類』です。役割が違うんですよ」と。

具体的な違いは以下の通りです。

項目

重要事項説明書

賃貸借契約書

作成者

仲介の不動産会社

貸主(大家さん)

説明者

宅地建物取引士(必須)

誰でも可

タイミング

契約締結前

契約時

法的根拠

宅地建物取引業法第35条

民法

保管者

不動産会社と借主

貸主と借主

重要事項説明書は宅地建物取引業法第35条により、契約前に宅地建物取引士が説明することが義務付けられています。一方、賃貸借契約書には説明義務がないため、内容をしっかり確認するのは借主自身の責任となります。


契約前に確認すべき9つのポイント

私が仲介業務を行う中で、「ここを見落として後悔した」というケースが多い項目を9つにまとめました。

ポイント1:物件情報の確認

契約書の冒頭には、物件名、所在地、間取り、築年数などが記載されています。「そんなの間違えないでしょ」と思われるかもしれませんが、部屋番号の記載ミスは実際に起こります。

私が担当した静岡市駿河区の物件で、「203号室」と「302号室」を取り違えて契約書が作成されていたことがありました。署名前に気づいたため事なきを得ましたが、気づかずに契約していたらトラブルになっていたでしょう。

ポイント2:契約期間と更新条件

一般的な賃貸契約は2年契約で、更新料は家賃1ヶ月分というケースが多いです。ただし、物件によって条件は異なります。

特に注意が必要なのが「定期借家契約」です。通常の「普通借家契約」は更新が原則ですが、定期借家契約は期間満了で終了し、再契約が必要になります。契約書に「定期建物賃貸借契約」と記載されている場合は、契約期間後に住み続けられない可能性があることを理解しておいてください。

ポイント3:家賃・共益費の支払い条件

家賃の金額だけでなく、以下の点も確認しましょう。

  • 支払い期日(当月払いか翌月払いか)

  • 支払い方法(振込か引き落としか)

  • 振込手数料の負担者

  • 遅延した場合の損害金

私の経験では、「翌月末払い」と「当月末払い」を勘違いして、入居初月に家賃を滞納してしまったという相談を受けたことがあります。

ポイント4:敷金・礼金の金額と返還条件

敷金は退去時に返還されるお金ですが、「どのような場合に差し引かれるのか」が重要です。

民法改正により、敷金の定義と返還ルールが明確化されました。(参考:国土交通省「住宅の賃貸借契約に関連する民法改正の概要」 https://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/house/jutakukentiku_house_tk3_000023.html

具体的には、通常の使用による損耗(経年劣化や通常損耗)は借主の負担にならないことが法律上明記されています。

ポイント5:設備と残置物の区別

契約書には、部屋に備え付けられている設備が記載されています。ここで重要なのが「設備」と「残置物」の違いです。

「設備」として記載されているものは、故障した場合に大家さんの負担で修理してもらえます。一方、「残置物」は前の入居者が置いていったもので、故障しても補償されません。

エアコンや照明器具が「設備」なのか「残置物」なのか、必ず確認してください。私が担当した物件で、「エアコンが壊れたので直してほしい」と連絡があったものの、契約書上は残置物扱いで、入居者負担になったケースがありました。

ポイント6:解約予告期間

退去する際、何ヶ月前に通知すればよいかが記載されています。一般的には1ヶ月前ですが、2ヶ月前という物件もあります。

「1ヶ月前だと思っていたら2ヶ月前だった」という見落としは意外と多く、その場合は余分に1ヶ月分の家賃を支払うことになります。

ポイント7:原状回復の範囲

退去時にどこまで借主が負担するのかは、契約書の「特約条項」に記載されていることが多いです。

国土交通省の「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」では、通常損耗は貸主負担が原則とされています。しかし、特約で「ハウスクリーニング費用は借主負担」などと定められている場合は、その特約が優先されます。

私は必ず「特約条項」を丁寧に説明するようにしています。特約の内容を理解せずに契約してしまうと、退去時に想定外の請求を受ける可能性があるからです。

ポイント8:禁止事項

ペットの飼育、楽器の演奏、同居人の追加、事務所使用など、禁止されている行為が記載されています。

「小型犬なら大丈夫だろう」「電子ピアノならいいだろう」と自己判断してしまい、契約違反でトラブルになるケースは少なくありません。不明な点があれば、契約前に確認することをお勧めします。

ポイント9:連帯保証人の極度額

2020年4月の民法改正により、連帯保証人を立てる場合は「極度額」(保証の上限額)を契約書に明記することが義務付けられました。

極度額の記載がない保証契約は無効となるため、連帯保証人を立てる場合は必ず確認してください。(参考:国土交通省「極度額に関する参考資料」 https://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/house/jutakukentiku_house_tk3_000023.html


民法改正で変わった3つのルール

2020年4月に施行された民法改正により、賃貸借契約に関するルールが大きく変わりました。私が実務で特に意識している3点を解説します。

1. 敷金の定義と返還ルールの明確化

改正前は、敷金の返還をめぐるトラブルが多発していました。改正後は、敷金は「賃借人の債務を担保する目的で交付する金銭」と定義され、退去時に債務を差し引いた残額を返還することが明記されました。

2. 原状回復義務の範囲の明確化

「通常の使用及び収益によって生じた損耗」と「経年変化」については、借主に原状回復義務がないことが法律上明記されました。

たとえば、壁紙の日焼けや畳の自然な変色は、借主の負担にはなりません。ただし、タバコのヤニによる変色や、ペットによる傷は借主負担となります。

3. 一部使用不能時の賃料減額

賃借物の一部が使用できなくなった場合、その割合に応じて賃料が当然に減額されることが規定されました。

私が担当した物件で、給湯器の故障により2週間お湯が使えなかったケースがありました。このような場合、修理までの期間について賃料の減額を請求できる可能性があります。


電子契約・IT重説の注意点

2022年5月の宅地建物取引業法改正により、重要事項説明書や契約書の電子交付が可能になりました。(参考:全日本不動産協会「賃貸住宅標準契約書等の一部改訂について」2022年4月 https://www.zennichi.or.jp/

電子契約のメリット

  • 来店不要で契約手続きが完了

  • 書類の保管がデジタルで簡単

  • 印紙税が不要

電子契約の注意点

私がお客様にお伝えしているのは、「画面上で確認するだけでなく、一度印刷して紙で読むこと」です。

画面上だと読み飛ばしてしまいがちですし、細かい文字が見づらいこともあります。重要な契約書類は、印刷して保管しておくことをお勧めします。

また、電子データはバックアップを2重、3重に取っておきましょう。スマートフォンの故障やパソコンの買い替えで、契約書データが消えてしまったという相談も受けたことがあります。


よくある失敗パターンと対処法

失敗1:特約条項を読まずに契約

「退去時のハウスクリーニング費用3万円は借主負担」という特約があることを知らず、退去時に驚いたというケースです。

特約条項は契約書の最後に記載されていることが多く、読み飛ばしがちです。私は必ず「特約条項が一番大事ですから、ここだけは絶対に読んでください」とお伝えしています。

失敗2:解約予告期間の勘違い

解約予告が「2ヶ月前」だったのに「1ヶ月前」だと思い込んでいたケース。1ヶ月分余計に家賃を支払うことになりました。

失敗3:設備と残置物の確認漏れ

入居後にエアコンが故障したが、残置物扱いで修理費が自己負担になったケース。契約前に設備一覧を確認していれば防げました。


よくある質問(FAQ)

Q:契約書に納得できない条項がある場合、変更してもらえますか?

A:交渉は可能です。ただし、応じてもらえるかは大家さん次第です。私の経験では、「短期解約の違約金を1ヶ月から0.5ヶ月に」といった交渉が成立したケースがあります。一方で、「この条件が嫌なら他の方に」と断られることもあります。

Q:重要事項説明を受けた後でもキャンセルできますか?

A:重要事項説明を受けた時点では、まだ契約は成立していません。説明を聞いて納得できなければ、契約をしないという選択も可能です。ただし、申込金を支払っている場合の返金ルールは物件によって異なりますので、事前に確認してください。

Q:契約書をもらえませんでした。問題ありますか?

A:賃貸借契約書は、貸主・借主の双方が保管するものです。契約後に必ず1部は受け取ってください。もらえていない場合は、管理会社に連絡してコピーを請求しましょう。

Q:連帯保証人を立てられない場合はどうすればいいですか?

A:保証会社を利用することで、連帯保証人なしで契約できる物件が増えています。保証会社への加入料(家賃の0.5〜1ヶ月分程度)が必要になりますが、親族に負担をかけずに済むメリットがあります。


まとめ

賃貸借契約書を確認する際のポイントは3つです。

1つ目は、特約条項を必ず読むこと。退去時の費用負担など、重要な条件が記載されています。

2つ目は、解約予告期間を確認すること。1ヶ月前か2ヶ月前かで、退去時の負担が大きく変わります。

3つ目は、設備と残置物を区別すること。故障時の修理費負担が異なります。

契約書は難しい言葉が多く、読むのが面倒だと感じるかもしれません。しかし、署名・捺印した後は契約内容を変更することが難しくなります。わからないことがあれば、遠慮なく不動産会社に質問してください。

静岡市で賃貸物件をお探しの方、契約内容についてご不安がある方は、Authentill Styleまでお気軽にご相談ください。宅地建物取引士が契約書の内容を丁寧にご説明いたします。


参考文献

著者情報

佐須陽介

佐須陽介

代表・宅地建物取引士

宅地建物取引士(静岡) 第 025298号 賃貸不動産経営管理士(2)第 059325号 住宅ローンアドバイザー

業界歴15

静岡市出身、現在は静岡市を拠点に不動産仲介・コンサルティング業務を手掛けています。これまで新築・中古マンション、戸建、賃貸管理まで幅広く携わってきました。

数多くのお客様の住まい選びをサポート。住宅ローンの借り換え支援なども含め、現実的な選択肢を提示することに定評があります。

得意分野: 不動産仲介、住宅ローンアドバイス、賃貸管理、不動産コンサルティング
趣味: 釣り、映画鑑賞、子どもと過ごす時間。休日には街を歩きながら、地域の魅力を再発見することが楽しみです。

静岡市を拠点に不動産仲介・コンサルティング業務を手掛けています。私自身もかつて住宅ローンの借り換えを経験し、「数字に強く、現実的な選択肢を示すこと」を常に心がけています。代表メッセージ(Authentill Style)にあるように、お客様に寄り添い、安心できる住まい選びを一緒に進めたいと心から願っています。

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